雄一には愛情を注げませんでした。母親として失格です。でも、大学にも行かせたのですよ。雄一を育てるために母親としての義務は全て果たしたつもりです。小さい頃、雄一を構ってやれなかったことは悪く思っています。でも、あの子を育てる為に私は働かなくてはならかった。無我夢中で生きてきたのです。だから、良い悪いなんてその時は考えることはできなかった。
雄一は親が言うのも何ですが、不気味な子でした。私の母も同じことを言っていました。何と言うかこちらの心を見透かされている気がしたのです。
近所の人たちからは、勘の良い子、先を読める子、機知に富んだ子と思われかわいがられることもあるにはあったのですが、警戒心の強い子、人の様子を窺い過ぎる子、何を考えているのかわからなくて薄気味悪いと嫌われることも少なからずありました。
高校に入ってからはせっせとアルバイトをしていると思ったら、大学に行きたいと突然言ってきたのです。そんなお金はないと言うと、アルバイトで貯めたと言うではありませんか。反対されるとわかっていたから、最後まで言わなかったそうです。それでも毎月の学費は私が出しました。親としてそのくらいの支援はしてやりたかったのです。それなのに途中で大学を辞めると言い出して、訳がわかりませんよ。それ以来、連絡はほとんど取っていませんでした。
今はどこでどうしているか全くわかりません。あの子は父親の血を受け継いだのでしょう。情けないです。
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