ポー

(Edgar Allan Poe、1809〜49)


『アッシャー家の崩壊』 "THE FALL OF THE HOUSE OF USHER"

 陰鬱な情景と心象がもたらす死の想念を象徴的に描き、読者をも追詰めて滅入らせる特異な作品。生と死、精神世界と物質世界が混在となつて判別が出来ない幕切れにポーの特質が最もよく出てをり、短篇小説と云ふよりも寧ろ象徴詩と云ふのが相応しい。[☆☆]

『ウィリアム・ウィルスン』 "WILLIAM WILSON"

 ドッペルゲンガーを描いたポー特有の幻覚に充ちた作品。最後の「お前がどんなにまつたく自分を殺してしまつたといふことを、お前自身のものであるこの姿でよく見ろ」と云ふ件は、後の二重人格小説に多大な暗示を与へたに違ひない。[☆☆]

『メールストロムの旋渦』 "A DESCENT INTO THE MAELSTRÖM"

 語部の精緻な描写で恐怖体験が紡ぎ出される。窮地において死を悟ることにより、却つて冷静沈着な判断力を得た男の綺譚で、緊迫した情景が読者を掴んで話さない傑作だ。[☆☆]

『黄金虫』 "THE GOLD-BUG"

 謎解き推理の要素がふんだんに盛り込まれた楽しさ満点の傑作で、ここから蒔かれた種子がスティーヴンソンやコナン・ドイルの名作に実を結んだ。暗号を解く件は全ての読者を虜にするに違ひない。[☆☆]

『黒猫』 "THE BLACK CAT"

 短い作品だが読後も不気味な海潮音を響かせる恐るべき作品。身の毛が弥立つ結末は怪奇と幻想に充ちてゐる。血腥い筋運びだけでなく、「最善の判断に逆らつてまでも、その掟を破らうとする永続的な性向」を俎上に乗せた嗜虐的な趣の傑作だ。[☆☆☆]


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