― サロン・ド・ソークラテース版 ―
8とはまた中途半端な―これを見て大概の方はさうお思ひになるでせう。勿論、最初は「世界の十大小説」―モームの向かふを張る積もりはないのですが―と銘打つてみたものの、どうしても8つまでしか挙げることが出来ませんでしたので、格好が付かないと分かりながらも、思ひを偽らずにこのやうな形にしました。8つしかない訳はないだらう―さうお考えになられるのは至極尤もです。遺憾ながらサロン・ド・ソークラテース主幹は未だ『ユリシーズ』と『失はれた時を求めて』を読んでをりませぬ。そんな人間にこんな頁を作る資格は露ほどもないのですが、上記八作品を全て読んでゐる方も稀でせうから何かの役には立つかも知れませぬ。「私が選ぶ十作」などはつい気になつて読んで仕舞ふものですから、この頁も気安い心持ちで見て頂く方がよいのです。上記八作品の中に未読作品がある方や、これから世界文学に挑戦しようとする方の指標になれば幸ひです。 |
次に、涙を飲んで選べなかつた作品のことを述べたいと思ひます。まず、飽く迄小説を対象にしましたので、『イーリアス』も『オデュッセイアー』も『オイディプス王』も『神曲』も『ファウスト』も含まれません。これらが世界文学の最も重要な作品であることは忘れずに述べておきたいと思ひます。 |
さて、八大小説について少々述べてをきませう。ただし、内容については詳しく触れません。作品を読めばその凄さは分かるでせうから、蛇足を付け加へる必要はないと思ひます。ところで、八大小説にドストエフスキーの作品が3つもあるのは偏り過ぎではないかとお叱りを受けるかもしれませんが、主幹はどれかを削るくらいならひとつも挙げない方がましだと考へてをります。それくらいドストエフスキーは別格なのです。重苦しいドストエフスキーの作品を敬遠する方も多いと思ひますが、一度その毒に当たれば決して抜け出ることの出来ない魔力があります。特に最後の大作『カラマーゾフの兄弟』は空前絶後の作品で、八大小説中第一等の格付けです。魂の救済を扱ふ世界文学の最高峰であり、出来れば多感な青年時代に読むことを薦めます。既成道徳を乗超えることが出来るとする非凡人の思想を展開する『罪と罰』。新たな神になるために理論的に自殺を図る『悪霊』。何れ劣らぬ名作です。
我が門を過ぎるもの
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